大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和61年(わ)340号 判決

本籍

横浜市中区小港町三丁目一〇七番地

住居

埼玉県浦和市東岸町一八番六号

割烹料理店業等手伝

中村晃三

昭和二二年六月二日生

右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺坂衛出席の上審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年に処する。

この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、小島葵、二宮啓、金田こと金義信と共に、飯田一彦の死亡により同人の財産を相続し、かつ、共同相続人の飯田悦子、飯田玲子の相続税申告の代理人であった飯田嘉翁から、同人、右飯田悦子及び飯田玲子の各相続税申告について相談を受けていたものであるが、右小島葵、二宮啓、金田こと金義信、飯田嘉翁と共謀の上、右飯田嘉翁、飯田悦子、飯田玲子の各相続税について架空未払金を計上して課税価格を減少させる方法により相続税を免れようと企て、昭和五九年八月二三日、埼玉県浦和市常盤四丁目一一番一九号所在の所轄浦和税務署において、同税務署長に対し、被相続人飯田一彦の死亡により同人の財産を相続した右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の正規の相続税課税価格は別表「正規の相続税課税価格」欄記載のとおり合計一七億一四五〇万九〇〇〇円であったのにかかわらず、右飯田一彦には高畠玉枝に対して一三億九〇九四万の未払債務があり、これを右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子において別表「債務額」欄記載のとおり、それぞれ負担することが確定したので、それぞれの取得財産の価格からこれを控除すると右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の相続税課税価格は別表「申告相続税課税価格」欄記載のとおり合計四億三九一二万四〇〇〇円で、それぞれ遺産にかかる基礎控除額を控除して算出すると右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の相続税額は別表「申告相続税額」欄記載のとおり合計五七六七万八〇〇〇円である旨の相続税申告書を提出し、もって、不正の行為により別表「正規の相続税額」欄記載のとおり右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子のの正規の相続税額合計四億九二七〇万八七〇〇円と右三名の右申告税額合計との差額四億三五〇三万七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷(第六回及び第一一回公判)における供述

一  被告人の検察官に対する昭和六一年一月二七日付供述調書

一  分離前の相被告人小島葵、同金義信、同二宮啓、同飯田嘉翁の当公判廷(第六回公判)における各供述

一  小島葵(昭和六〇年一二月一五日付二通、昭和六一年二月七日付)、金義信(同月一〇日付)、二宮啓(同年一月一四日付)、飯田嘉翁(同月一七日付一七枚綴のもの、同月二二日付)の検察官に対する各供述調書

一  飯田悦子、飯田玲子及び高畠玉枝の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  飯田嘉翁作成の「提出書」と題する書面

一  大蔵事務官作成の昭和六〇年八月二三日付領置てん末書

一  大蔵事務官各作成の未払金調査書、預金調査書、生命保険契約の権利調査書、損害保険契約の権利調査書、預り金調査書、申告調整金調査書

一  押収してある相続税の申告書綴一綴(昭和六〇年押第七二六号の八)、相続税の申告書綴<遺産分割協議書添付>一綴(同押号の九)及び相続税の修正申告書綴一通(同押号の一〇)

(法令の適用)

被告人の判示所為は刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条一項、七一条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で、被告人を懲役一年に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田耕生 裁判官 白神文弘 裁判官 坂本宗一)

別表

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例